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雑記帳

2020/04/29 

スライディングブロックパズル

15ゲーム
図1 15パズル(15ゲーム)

 今回はパズルの中でも定番のジャンル、スライディングブロック系のパズルを紹介します。 定義は色々あると思いますが、主に「決められた枠内で空所を利用して板などのパーツを移動させ、所定の配列に並べ替えるパズル」を指します。

15ゲーム色々
図2 昔の15ゲーム

 中でも代表的なのは、図1の15パズル(または15ゲーム)でしょう。 色々な文献によると19世紀中頃にはあったようなので、かなり歴史のあるパズルです。
 図2は骨董市やアンティーク店で入手したものです。実際にこうやって昔の物を手にすると歴史を感じます。 左の木製のものは参考資料1に紹介されているフランス製のものと同じに見えるのですが、 外観の写真が掲載されてないので、同じものかどうか悩ましいところです。

14-15パズル
図3 14-15パズル
14-15パズルの解答例?
図4 解答例?

 中でも有名な問題は、巨匠サム・ロイドが1878年に発表した14-15パズルでしょう。 問題はシンプルです。図3のように14と15の板だけが逆に並んでいるので、 この2枚を入れ替えて1から15まで左から右、上から下の順に並ぶようにせよという問題です(もちろんスライディングブロックのルールで)。
 これ以前から15パズルは存在していたのですが、正解者には1000ドルという高額な賞金があったため、 一気に火がついて大流行となりました。
 「自称正解者」は多数いたようなのですが、賞金を手にした本物の正解者はいませんでした。 というのも、この問題は「不可能」が正解だからです。

 今では参考資料2など、多くの書籍でこのパズルの数理的な解説があります。 簡単に言うと、「1ヵ所(奇数ヵ所)だけ入れ替えることは不可能。必ず2ヵ所(偶数ヵ所)入れ替える必要がある」ということです。

 とはいえ、この14-15パズルには屁理屈的な解答もいくつかあります。 中でも、個人的に気に入っているのは図4の配置です。この形に並べて右に90度傾ければ、ほら出来た(?)

15パズルと同型のパズル
図5 同型のパズル

 このパズルには、縦横のパーツ数を変えたり数字を絵や文字にした同型のパズルが色々あります。 図5はその一例です。右端は、指定された4文字の単語4つを作るという、ちょっと毛色の変わったパズルです。

父親のパズル
図6 父親のパズル

 図6の父親のパズル(Dad's Puzzler)も歴史があり 海外では定番のようですが、日本ではあまり見受けられません。 商品としても見たことがありませんし、取り上げている書籍もかなり少ないようです。

 1×1,1×2,2×2(大駒)の3種類のパーツを使っています。 左上角の大駒を左下角に移動させるのが問題です。

スカウトゲーム「相撲」
図7 スカウトゲーム「相撲」(箱入り娘)
箱入り娘
図8 箱入り娘

 このタイプで日本で定番なのは、図7や図8の箱入り娘と呼ばれるものです。 海外では大駒に「ろば」が描かれていたのでろばパズルというのが一般的なようです。
 これは上にある大駒を枠の下中央にある幅2の出口まで移動させるのが目的。テーマによってそれが娘だったり横綱だったり動物だったりと色々です。
 パーツの大きさが3種類あるので、適当に動かしていると手詰まりになり、それ以上先に動かせなくなることがあります。 これが全部同じ大きさと形の15パズルとは大きく異なる特徴です。

 このタイプの解法は参考資料3で詳しく述べられています。

 さて、図7の製品の「出口」と書かれたパーツは遊ぶ前に取り外すのですが、 この出口パーツは他の1×2パーツと同じ大きさと厚さです。これを通常のパーツとして使うと、父親のパズルを遊ぶことができます(図9)。
 また、参考資料3にはろばパズルと1世紀(半)パズルが紹介されています(図10と図11)。
 そして図12は参考資料4で紹介されている太った御婦人(LET ME THROUGH)の配置です。

父親のパズルの配置
図9 父親のパズル
ロバのパズル
図10 ろばパズル
1世紀(半)パズル
図11 1世紀(半)パズル
太った御婦人
図12 太った御婦人

トイレパズル
図13 トイレパズル

 左は匹見製のトイレパズル。 外に出ている便器を中に移動させるパズルです。
 この原典は Get My Goat という、ヤギを囲いの中に入れるパズル。 特許が1914年に取られているので、100年以上も昔のパズルです。
 これも色々とデザインを変えて商品化されています。

 この種のパズルは深く考えずに適当に動かしているうちに目的の配置にたどり着くことがあります。
 そこでよくあるのが「最少手数で」という追加の条件です。すると無駄な移動を省くため、効率の良い手順を考えることになります。 ところが、このパズルにはそれを逆手に取るような罠が仕掛けられており、それに気づかないと最少手数どころか目的の配置にたどり着けません。
 私もそれに気がついた時、思わずうなりました。最初に考えた人は本当にすごいと思います。

時計パズル
図14 時計パズル

 図14は、コンスタンチン作の時計をモチーフにしたパズルです。 説明書には、スライディングブロックパズルならぬスライディングクロックパズルと書かれています。

 見ての通り、パーツを枠の中でスライドさせて移動して時計の配置にするのですが、 それには2つのパーツを回転させる、あるいは3つのパーツを回転させて上下をひっくり返す必要があります。
 そのため、15パズルや箱入り娘のような明確な移動単位や手数というものがありません。かなりアナログ的な動きとなる手順になります。

正三角形アウトと直角三角形アウト
図15 正三角形アウトと直角三角形アウト

 個人的に、動きがアナログ的なスライディングブロックパズルでは、左の 正三角形アウト直角三角形アウトが傑作ではないかと思っています。
 これは色の付いたパーツを枠の下に開いている隙間から出すのが目的です。 パーツや枠のサイズが絶妙で、アナログ的な動きはそれまでのスライディングブロックパズルにない感覚を味わえます。

 この続編に長方形アウト五角形アウトがあるのですが、 両方とも買い逃してしまいました(復刻版もあったのですが、それも買い逃しました…)。

広告用パズル
図16 広告用パズル

 左のパズルはスライディングブロックに含めていいか迷ったのですが、紹介することにしました。

 多分、食品関連企業の広告用に作られたものだと思われます。 金属(ステンレス?)製で、溝にリベット状のパーツがはめ込まれています。パーツの裏は潰してあるので取れません。
それぞれのパーツには文字が刻印されており、溝に沿って動かし、上下にある短い溝を利用して並べ替えて真ん中の部分に 決められた単語を作るものです。

自作パズル
図17 自作パズル

 最後に私が考案したものを紹介します(既にどこかで発表済みと思いますが)。

 3×3の枠内に1から8までのパーツが入っています。 中央の空所には左右に壁があり、そこは通れません。よって、横中段のパーツは上下移動しかできません。

 最初に適当に動かしてかき混ぜた後、元に戻すのが主な遊び方です。 パーツの入れ替え手順に慣れないとなかなか元に戻らないので、初心者には手ごたえのあるパズルかと思います。

 世の中にはスライディングブロック系のパズルはまだまだあります。 全部遊ぶのは、並のパズル好きには不可能ではないかと感じるほどです。
 今回紹介したのは動きが平面的なものばかりでしたが、パーツが2階建てになっている多層構造のものや、 立方体をパーツに使った3次元の動きをするものもあります。これらのパズルも、機会があれば紹介したいと思います。


参考資料

1) THE 15 PUZZLE : 著:JERRY SLOCUM, DIC SONNEVELD
 The Slocum Puzzle Foundation 2006年6月発行

2) ゲームにひそむ数理 : 著:秋山仁,中村義作 森北出版株式会社 1998年5月15日発行

3) [数学]じかけのパズル&ゲーム 著:E・R・バーレキャンプ/J・H・コンウェイ/R・K・ガイ
 訳:小谷善行/高島直昭/滝沢清/芦ヶ原伸之 HBJ出版局 1992年3月31日 第1刷発行

4) 芦ヶ原伸之の究極のパズル : 編集:Quark編集部 講談社 昭和63年4月8日発行

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