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雑記帳

2017/11/19 

時代と共に消えるパズル

 まずは次のパズルを見てください。

問 : 電話の1の穴に指を入れ指止めまで回して止める。さてこのとき、先ほど1のあったところには何番が来てるか。

答 : ワクだけが動くので1番はそのままの位置にのこっている。

 ある年齢以上の方には「ああ、あれね」という、おなじみのヒッカケ問題でしょう。 しかし最近の若い人、特に20代以下の若者には意味不明ではないかと思います。 なぜなら、このパズルで言っている電話とはダイヤル式の電話だからです。

 ボタン式の多機能電話が普及した今、ダイヤル式の電話なんてドラマの中でしか見たことのない人も 多いと思います。まして現代は「電話=携帯・スマホ」の世の中。「ダイヤル式?なにそれ?」という人がいても不思議ではないでしょう。 本当に見たことのない人は「電話 ダイヤル式」で検索すると、色々な写真が出てきます。上の問題の意味がわかると思います。

 身の回りの物を使ったパズルは親しみやすい反面、技術や制度が変わることで時代に合わなくなり、 この「電話」のように成立しなくなる場合があります。

 実際の消費税を使った計算パズルも同様です。本体価格から消費税の上乗せ分を求める際に、 1円未満の端数を利用したトリックのあるパズルの場合、税率が変わったら成立しなくなります。 実際、消費税が3%だったころに作られたパズルの中には「消費税率3%」と明記していないために、今では成立しなくなっているものもあります。

 先の電話のパズルは昔に流行った古典的な問題ですが、 手元の資料では1998年(平成10年)3月初版発行のパズル本にも掲載されています。 平成の時代にそんなパズルを収録した著者の時代錯誤も困ったものですが、それでOKにした編集側の姿勢もどうかと思います。


楕円の腕時計

問 : 左の図は実際の腕時計を見ながら描いたものである。この図には重大な誤りが1つあるのだが、それは何だろう?

答 : いくつか考えられると思うが、最も重大な誤りは針の長さである。これでは長すぎて枠に引っかかり、きちんと回転できない。

 これも古典的なパズルで、注意力・観察力を試すものです。子供のころ、この問題を初めて読んだときには 何が間違っているのかが分かりませんでした。答えを見て「あ、そうか!」と妙に感じ入ったことを今でも覚えています。

 この解答に対する反論に「天蓋のガラスが無くて、針が枠の外に飛び出す構造になっていれば、 ちゃんと回転できるじゃないか」というものがあります。実際に作って作れないことはないと思いますが、それだと腕時計としての実用性に難があるので、屁理屈として却下するべきでしょう。

 ところが最近になってスマート・ウォッチなるものが発売され、状況が変わってきました。 スマート・ウォッチは、いわば腕時計サイズの超小型スマホで、文字盤の部分がスマホのように液晶や有機ELのディスプレイになっています。 対応アプリをインストールすれば、時計以外の機能を持つ情報端末になります。

 将来このディスプレイの解像度が上がって、より細かい画像を表示できるようになると、 上の腕時計のパズルは困ったことになります。実際のアナログ式腕時計の文字盤と時針を表示するアプリを開発すればいいのですから。 もちろん、上のパズルのような楕円形の文字盤の場合、時刻によって針の長さを変えて表示するのは言うまでもありません。

 こうなると実用性の面でも問題はないので、屁理屈として切り捨てるわけにはいかなくなります。 この腕時計のパズルも、もうすぐ成立しなくなるかもしれません。


問 : 私の知り合いの心臓の弱い男が就寝中に夢を見たのだが、あまりに怖い夢だったので恐怖のあまり心臓麻痺を起こして寝たまま死んでしまった。 さて今の文章で、おかしな点は何だろう?

答 : 寝ている間に亡くなった人がその直前まで見ていた夢の内容など、わかるはずがない。

 これも古くからあるパズルで、論理的な考え方を試すものです。 上のように短くまとめてあると子供でも少し考えればわかると思いますが、 ショート・ショートの小説風に長い文章で出題されると大人でもすぐにはわからない文章題に仕上がります。

 「こんな夢を見た」と本人が言うだけで、実際には他人が見た夢を知ることは不可能…のはずでした。 実は最近、寝ている人の脳の活動を外部から調べ、その時に見ている夢を映像化する研究が行われており、ある程度の成果が出ています。 まだかなり大雑把な映像しか作れませんが、夢を見た本人ならどんな映像なのか説明できる程度には成功しているようです。

 この研究が進んで、他人が見た夢をきちんと映像化できるようになると、このパズルは成立しなくなります。 他人が見た夢を知ることは不可能という大前提が崩れてしまうわけですから。


 これらの他にも、時代が進むにつれて成立しなくなり、消えてゆく運命にあるパズルがあると思います。 一番考えられるのは、マッチ棒パズルではないでしょうか。火をつける道具としてはライターが全盛で、マッチがない家庭もかなり多いと聞きます。

 マッチ棒パズルの多くは綿棒や楊枝で代用できますが、中にはマッチ棒の特質 (断面がほぼ正方形、火をつけるために塗ってある薬など)を利用したものもあります。そんなパズルは綿棒や楊枝では解けません。 やはり消え去る運命にあるのでしょうか。

 一方で、最近になって当たり前になったもの、例えばスマホだからこそ成立するパズルというものを 私は寡聞にして知りません。若者ならではの意外なスマホの使い方を調べたら、頭の硬いオジサン・オバサン向けの新しいパズルができるかもしれません。

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